− A Historic Addendum −

 

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 ┣キャスト:フレデリック

 ┗場所:任意(登場自由)

 

 

 

 

フレデリック  戦後の三年間、フレデリック1世は間違いなく、ブリスランドで最も多忙な人間になっていた。

フレデリック  街道の整備の視察と称して、幼い姫を引き連れてあちこちを飛び回り、市井のものたちと語り合う日々。

フレデリック  もちろん、勝手に連れ出しているので後で二人してバレリアに大目玉を食らうのだが。

フレデリック  それでも仕事をきちんとしていたおかげか、民衆の支持は高かった。

 

フレデリック  産業の開発にも勤しんだ。

フレデリック  終戦に伴い大量の失職が予想される兵士の対策は急務で、兼ねてより目をつけていた大規模な林業開拓に着手しようとしたところ、“山賊公”サマバが猛反対。

フレデリック  三日に渡る長い議論の末、その心意気に打たれたフレデリックがついに折れた。

フレデリック  ……と、伝えられているが、実際は三日目が明けた朝、クロスカウンターの体勢で倒れている両者をクインシーが発見したというのが真実である。

フレデリック  その対価としてかどうかは定かではないが、サマバは木こりの間で秘薬とされていた蜂蜜の生産方法を広く伝授。後にこれはブリスランドの主産業となる。

 

GM-kuro サマバ「いやあ、あれは傑作でありましたな。起こしに来たのがバレリア殿辺りであったなら、蒼痣が一つ二つ増えておりましたわ」

 

GM-kuro 後に山賊公は、豪快に笑いながら朗らかに言い放ち

 

クインシー 「近くに火かき棒がないか真剣に探したのは、アレが最初で最後です。おそらく」

 

クインシー  しばし後に司祭服の男は何の気なしに、世間話をするように言っていた。

クインシー  口調は笑い話のようだったが、目は笑っていなかった。

 

 

フレデリック@舞台裏 ひどす

クリス@舞台裏 |っ・・)っ

クインシー@舞台裏  (ι…x…)y-~ だって俺も寝てへんねんもん

クリス@舞台裏 |っ・・)っ 怒った理由そっちかよっ

クインシー@舞台裏  (ι…x…)林業に着手するにも、先立つものがですね(にっこり  (目の下に真っ黒くま

 

 

 

フレデリック  当のフレデリックはというと、

フレデリック 「たまには本音をぶつけ合うのもいもんだ。殴り合いなんて久しくしてねえからなあ」

フレデリック  とあっけらかんとしたもので。

 

 

 

 

 

 

 

 

フレデリック  余談だが、ブリスランド名物の蜂蜜の焼き菓子。これの発案者は意外や意外、“大盗賊”のフリッツであった。

フレデリック  軟派な印象ばかりが歴史書で取り沙汰される彼だが、実際のところその評価に誤りはない。

フレデリック  しかしちゃっかりと貴族の女性や豪商の女主人などに広いコネクションを持っており、そういう女性の好む甘味をあれこれと把握していたのだ。

フレデリック  研究を重ねて生み出された菓子は、上流階級の女性に好評となり、大枚を叩いてでも買い求める客の便りが海の向こうからも大量に届くようになるのに、そう時間はかからなかった。

フレデリック  ちなみに開発協力は教会、つまりクインシー達である。

 

GM-kuro フリッツ「ふっ……流石は俺! そう、この俺様のスイーツは甘く、優しく美女の心に溶け込んでいく……だから許してもらえませんぐぶふおっ!?」

 

GM-kuro 当の本人は、大人気の焼き菓子をお詫びの菓子折りとして使用しては

GM-kuro 天高く舞い踊る日々を続けていたようだ

 

クインシー 「意外な才能というべきか…いや、人気があるからいいんですが」

 

クインシー  様子を見に来た折の、風と戯れる大盗賊を見ての感想である。

 

 

 

 

フレデリック  また、同様に仕事がなくなることが懸念されていた鍛冶師たちへの対策も進められていたが、これはパネラの趣味が解決の糸口となった。。

フレデリック  というのも、ただでさえ高温の作業場に一日中いる仕事で、夏場ともなれば地獄のような気温になる中、わずかでも熱気を和らげようと、彼女の工房にはいくつかの風鈴が提げられている。

フレデリック  その中のひとつ、硝子製の風鈴を見たフレデリックは、これを商品化することを提案。

フレデリック  これは予想以上に評価が高く、高級細工はハイデルランドの王侯貴族に、安上がりの小物は市井の民にと、広い顧客の獲得に成功する。

 

GM-kuro パネラ「いやー、あたしの趣味も金にな……もとい、役に立つもんねぇ」

 

GM-kuro 風鈴成金となっても、彼女の強欲と

GM-kuro 鍛冶、そして怪しい発明への飽くなき欲求は尽きず

GM-kuro それによって起きる被害の謝罪と賠償で、風鈴成金からただの鍛冶屋にすぐに成り下がったのは有名な話である

 

 

 

クリス そして

クリス それを見たクリスが、本人曰く

クリス 「ほっとけないな、と思いまして」

クリス と、落ち込んだパネラにぷろぽぉずしたりする。

クリス 結果は…

 

 

パネラ「んー、そうね。いいわよ

 

 

GM-kuro ごく平凡な

GM-kuro 二つ返事であった

GM-kuro その理由を後年

GM-kuro 彼女はこう語る

 

GM-kuro パネラ「ほら、旦那がああなら遺産で骨肉の争いをする子供とか、生まれそうにないじゃない」

 

GM-kuro 彼女なりの

GM-kuro 照れ隠しであった事を知っていたのは

GM-kuro クリスだけであったという

 

 

フレデリック  玉砕同然と思って賭けていた不埒者以外が、盛大に祝福したという。

 

 

クリス 式は、知人のみを招待した、割とこじんまりとしたものだった。

クリス しかし、二人には良く似合う結婚式だったそうだ。

クリス 何気に、出席者に王様がいたり、司祭がこの国の大司祭だったり

クリス 飾り付けが妙に高価な硝子細工だったりしたりしたが。

 

クリス ついでに、着付けの人が最初クリスを花嫁だと思ったのも、ちょっとした余談である。

 

 

 

 

 

       三年という月日は、あっという間に過ぎていった。

       その間に経済の立て直しの目途が何とか立ち、産業にも光が差して、ブリスランドの民は今までになく活気づいている。

       そんなある日のことだった。

       王が臣下を集めて、ある宣言をしたのは。

 

 

    「――そろそろ、王位退こうと思うんだが、どうよ」

 

 

 

クリス 「なるほど、院政ですか」

クリス その時、たまたま用があり登城していたクリスは、間髪いれずそう返した。

フレデリック 「どんな独裁者だよ」

フレデリック  苦笑混じりにうめく。

クリス 「それでは、国の借金がついに酷い事に?」

クリス ここ数年で、妙に金に敏くなったクリスである。

フレデリック 「だったらいちいち断るかよ」

フレデリック  さりげなく問題発言。

フレデリック 「まあ、100年くらいで返せるんじゃねえの? 利益出てるし」

クリス 「おや、思ったよりも短いですね。さておき、それでは何でまた?」

 

フレデリック  問われて僅かに上を見て、ぼやくような口調でフレデリックは言う。

フレデリック 「理由はまあ、いろいろあるが……」

フレデリック  ひと息。

フレデリック 「……あとはまあ、俺じゃなくても出来るだろ?」

フレデリック  安定期に向かいつつある現在のブリスランドで、『自分でなければ出来ない』ことはもうないと。

フレデリック  そう感じた……ということらしい。

クリス 「ふむ…」

クリス 王の、言わんとした事に頷いたクリスは

クリス 「そうですね。…ときに、あの娘に、伝えるべき事は伝えましたか?」

クリス 頷き、そう尋ね返した。

 

フレデリック 「隠し事はしてねえよ。嫌なら、実務全部、別の奴に任せてもいいと教えたしな」

フレデリック  ついでに、城から抜け出す方法や変装の仕方まで教えているのは秘密である。

クリス 「では、私はもう引き止める言葉はありませんね。残念ながら一緒に行けそうにはありませんが」

フレデリック 「所帯持ちは不自由だぁな」

クリス 「そういえば結局私だけですね、結婚したの。それに、まだやる事がありますし」

クリス この時期、クリスは

クリス より安全な航海のため、星視の技術を応用したより高度な航海術の開発

クリス そして、知識を書き留めた本を集め、保管する施設の建設の為に色々と忙しかった。

クリス 今日、城を訪れた理由も、建設する場所に関する交渉である。

 

フレデリック  後にブリスランド海軍が最強と謳われるようになるのも、彼の功績があってこそである。

 

 

クリス@舞台裏 |っ・・)っ 開発しようと思った理由が、スレイが安全に向こうに帰れるように、というのは

クリス@舞台裏 |っ・・)っ 秘密である(ぉ

 

 

クインシー 「失礼しますよフレデリック…おや」

クリス 「あぁ、クイン。久しぶりですね。睡眠時間は延びましたか?」

クインシー  羊皮紙の束を抱えたクインシーが室内の雰囲気に首を傾げた。

クインシー 「ふむ、そこそこ」

クインシー  短くなりました。

クインシー  実に普通にそう続けた。

フレデリック 「ちゃんと休めよ。つーか部下持て部下」

クインシー 「いますが」

クインシー  部下はきっちりいるのだ。任せられることはすでに押し付けている。

クインシー  それでも書類は余り減っていない。

クインシー  手早く済ませられるようになったおかげで、次々に仕事が舞い込んでくるようになったからである。

クインシー 「人手が増えると、仕事も増えましたので」

 

 

クリス@舞台裏 |っ・・)っ まだ短くなっているのか…

クインシー@舞台裏  (ι…x…)いつ寝ているのかよくわからない生活です。

クインシー@舞台裏  (ι…x…)胃薬と頭痛薬が友達です

クインシー@舞台裏  (ι…x…)仕事効率化→次の日にやってた仕事が今日に→以下略

クインシー@舞台裏  (ι…x…)現実にもあるよね

 

 

フレデリック 「そりゃ構造が悪い。もっと楽出来るようにしたほうがいいぜ」

フレデリック  そういいつつ、基本的に何でも自分でやってしまうのはフレデリックである。

クインシー 「貴方が言いますか」

クインシー  言って、追加の書類をフレデリックの机に置く。

クインシー 「で、何の相談を?」

クインシー  フレデリックとクリスを交互に見ながらの言葉。

フレデリック  手早くその書類を処理しながら、

フレデリック 「おう、他の奴らにも言ったんだがな……」

 

フレデリック  間。

 

クインシー 「ふむ、そうですか」

クインシー  処理済の書類を受け取りつつ、そう返す。

クインシー 「で、どこに行くおつもりで」

フレデリック 「聞くまでもねぇだろ」

フレデリック  にやりとする。

フレデリック 「ほんとはこのまま在位して、来年あたりにハイデルランド遠征の前哨戦に乗り出そうかとも思ったんだがな」

フレデリック  4年経って再編成され、練度も上がったブリスランド海軍は、言わば今が最も『脂の乗った』時期だ。

フレデリック 「だがまあ、そういうわけにもいくめぇ」

フレデリック  肩を竦める。

フレデリック 「ぶっちゃけな。ここにいたままじゃあ天下なんぞ取れねえんだ」

フレデリック  いい国ではあるんだが、と続け。

フレデリック 「海軍以外は正直、これ以上強力にはならんだろうしなあ」

フレデリック  更に言うなら、取引先となったハイデルランドへの侵攻はこの国の誰もが反対することだろう。

フレデリック 「所詮、俺は乱世の王よ」

フレデリック  にやりと笑う顔に、気負いはなかった。

 

クインシー 「ふむ」

クインシー  そう言い、ひとつ頷き

クインシー 「そう言うなら引きとめはしますまい」

クインシー  最初からするつもりも無かったことを口に出し

クインシー 「最後にはそう書くことにしましょう」

クインシー  そんなことも言った。

フレデリック 「お前ら、あっさりしてんなあ」

フレデリック  寧ろこっちが呆れたというように。

クインシー 「涙ながらに引き止めてほしかったんですか」

クリス 「しまった、目薬今日は持ってきていません」

フレデリック 「期待してねえよ最初からよ」

 

 

 

      そんな3人のやり取りを見て

      周辺から、思わず笑みが漏れる

 

      諦めたようなものや、憮然としたもの、楽しげなもの

      様々であったが

      皆、一様に

      こうなると思っていた

      そう言いたげな笑みを浮かべていたのだ

 

 

    「やはり、貴方は一つ所には留まらぬ方。何時か、フレデリックの名すらも捨てて、新たな何かを掴むでしょう」

 

 

      最初のフレデリック     

      火傷の男、クリシュナが

      仮面の彼方から笑みをたたえて、そう言った

 

      皆、同じ意見だったのであろうか

      クリシュナの言葉に、数名が黙って首肯した

 

 

 

       笑った。

       まるで子供のように嬉しげな笑み。

       見ている人間全てが、思わず笑い返したくなる笑顔。

       結局の所、王の資質より何よりも。

       この無邪気さこそ、彼をして人を惹きつける、最大の魅力だったのかもしれない。

 

 

      「なあに、心配は要らねぇよ。俺がいなくたってやっていけるさ。何せ……」

 

 

       そうして。

       フレデリック1世は。

       笑ったまま、その生涯最後の言葉を皆に告げた。

 

 

 

 

 

 

 

 

∵紋章∵  Emblem

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「――この国の民は、みんな強いからよ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

「そうだろ?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

Frederic                     。

 

 

changed the name to…

 

 

 

                      Baten.

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

       フレデリックと名乗っていた、ある一人の詐欺師が、カルラとサラサを引き連れて城を去ったのは、それからすぐのことだった。

       王という、一つの頂点を極めながらも、それをあっさりと捨てて。

       更なる高み――天下という見果てぬ夢を追い続ける男の旅は、まだまだ終わりそうもない。

 

 

バテン 「やー……身軽ってのも悪かねぇもんだ」

バテン  目の前には無限の海原。

バテン  港の潮風をいっぱいに吸い込んで大きく伸びをする。

 

GM-kuro カルラ「そうだな。某もここで随分と海に親しませてもらったものだ」

GM-kuro そんなバテンの背に

GM-kuro サラサ「でも、そろそろ草原が恋しいかな。ふふっ」

GM-kuro かかる、声

GM-kuro それは君と同じく

GM-kuro 流れ者に戻りし、二人の…

 

バテン  二人の前に立ち、

バテン  二人と同じように笑い、

バテン  稀代の山師、バテン・トライバルは、

バテン  空のように大きく、太陽のように熱を持つ声で告げた。

 

 

 

 

 

 

           「さあ、行こうや、友よ。――まずはそうさな、囚われの王の救出と洒落込むかい?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

かくして

一つの王の物語は終わりを告げ

名も無き英雄の物語が始まった

彼がいかな生涯を送ったのかは、数々の文献を紐解かねばならぬだろうが

その人生は、きっと

涼やかな、風のようなものであったに違いない

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

                                                    Scene end

 

 

 

 

 

 

 

 

■#

┣キャスト:クインシー

┗場所:任意

 

 

 

 

 

 

 

     クインシー・ヘイルは数々の書を残したことで知られている。

     例を挙げるならば“都市発展計画書”“経済と政治”“聖歌集補巻”など

     聖俗を問わず、いつ書いたのか、本当に本人が書いたのかも疑わしいものまで様々。

 

     その彼が、生涯最後に世に出したものが、かつての戦乱についての詳細な報告書

     俗に“歴史書”と呼ばれるものである。

 

     全13巻、補完3巻で構成されるこれは、当時の政治情勢や農作物の状況、

     果ては会計まで網羅したものであり、第一種の資料としても評価されている。

     ここまで書くのかと問われた彼は

    「資料は詳細であるに越したことは無い」と答えたという。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その歴史書の序文は、こうだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

戦士は武器を手に持ち流れを見る

 

己が道を手にした剣で切り開き

 

立ちふさがるものを槍で薙ぐ

 

二人の王は己が道を歩み行き

 

幾多の戦士がそれに従う

 

 

己が夢を胸に抱き

 

剣に己の夢を刻み

 

槍を掲げ進みゆく

 

 

 

暗黒は空から大地を見下ろし 光輝は地より空を照らす

 

砕けぬ盾は道を塞ぎ 言葉は幻が如くに佇む

 

剣掲げし王は頂を征き 槍持つ王は果てに臨む

 

 

 

二人の王と戦士たち

 

歴史を刻んだものたちの歩みを

 

 

 

 

 

 

- Blisland Saga -

“天意破る英雄達の物語”を

 

 

 

今ここに書き記そう

  

  

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

  

  

                                                    Scene end

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

かくして

一つの王の物語は終わった

後世、語り継がれし

 

“天意破る英雄達の物語”

 

紐解くものは、心せよ

そこにあるのはただの文字の羅列にあらず

時代を駆け抜けた、一陣の涼やかな風

 

それを閉じ込めた、命の書物であるということを…

 

  

  

  

  

  

  

  

  

  

                      ――End

  

  

  

  

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

  

 

 

 

 

 

  

  

  

  

  

         その後、バテン・トライバルを見たという者は誰もいない。

         もっとも、各地の歴史を紐解くと、       

         とある都市で一財産築いてすぐさまそれを食い潰したり、

         或いは流浪の傭兵団として活躍したり、

         そういった流れ者の中に、バテンらしき人物の話が散見されるが、それも本人かどうかは定かではない。

         ただ確かなこととして、ハイデルランドは今もなお混迷の中にあり、

         見果てぬ彼の夢、天下統一は夢と終わったかに見えた。

  

  

  

  

  

 

 

 

 

 

 

  

1069

 

旗の下で。

  

  

 

 

 

 

 

  

  

         それは奇妙な傭兵団だった。

          人族がいる。

           森人がいる。

            岩人がいる。

             猫人がいる。

              鬼人も獣人もいる。

               河の乙女や白鳥の乙女の姿も散見され、数こそ少ないが豚人までもがいる。

                それらの狭間に見える姿は、或いは翼人か樹人であろうか?

  

 

         だが彼らは一様に、戦の鬨を、一斉の号令を、今や遅しと待ち侘び、闘争の昂ぶりに身を震わせていた。

  

 

 

         遙かなる荒野には、雲霞の如き敵の軍勢。

         対する傭兵団は5000を超えるがやっと。

         にも関わらず、誰一人として臆した様子もない。

  

         やがて、そんな奇妙な一団に、報告の声が飛ぶ。

  

         色を失った伝令の声にしかし、悠然たる返答が来る。

  

        「狼狽えるな。要は、連中をここで足止めすりゃあいいんだろ?」

  

         応えたのは、まだ若い、若さ故の命知らずと自信とが同居した、強い瞳を持つ青年。

         笑みさえ含んだ彼の言葉に、周囲の部下達もまた類似の表情を浮かべる。

         満足げに旗下の軍を見渡していると、横に控える剣士が呟く。

  

        「まさに大地を覆わんばかり。これほどの軍勢は見たことがない」

        「それで、どうしますか?」

  

         剣士と瓜二つの顔をした娘が問いかける。その肩には、少女の身よりも長いイチイの弓。

         幼さの残る顔に不満そうな色をつけ、

  

        「団長、聞いてますか?」

        「ハッ、――決まってんだろ」

  

         若武者はひと言告げると、小高い丘に登り、真紅の外套を翻す。

         そして、空のように大きく、太陽のように朗々と、自らの軍勢に檄を飛ばした。

  

  

  

 

 

        「“覇天団”、全軍抜刀ッッ!! 教えてやれ……俺たちが誰であるのかを!」

  

  

  

  

  

時は1069年、三王会戦。

 

天、未だ、己を征する者を定めず。

 

 

 

 

乱世のハイデルランド――!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

                         The history continues

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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